絆ワークスタイルVol.7 
「埋もれた人材」が輝ける職場づくりの秘訣

今回取材に訪れたのは、女性が活躍する職場作りに取り組み、業績を伸ばすタケシマ技研さん。絆ワークスタイルの7回目は、タケシマ技研”イクメン”経営者の竹嶋社長にその秘訣をうかがいました。

「働きやすい」を第一に

栗東トレーニングセンターのほど近く、まだ紅葉には早い青々とした山林のふもとに、今回目指すタケシマ技研の社屋を見つけました。

ここでは、自動車部品を中心として、浄水器のカートリッジ、流体検査装置などの組み立てや加工・検査が行われています。

訪れた時は作業場で浄水器のカートリッジ組み立て作業が行われていました
訪れた時は作業場で浄水器のカートリッジ組み立て作業が行われていました

今回お話しを伺ったのは社長の竹嶋利之さん。工場内に足を踏み入れても分かる通り、スタッフの方ほとんどが女性です。これは「女性に働いてもらいやすい職場作りをするなかで、自然にそうなっていった」そうです。

また、仕事も女性スタッフのことを考えて、「女性が作業しやすいものを中心に受注しています。また、子育て世代が多いので、納期に対応しやすい仕事を選んでいます。」ということです。仕事を選んでいると、次から依頼が来ないのではと心配するのですが、後述する”強み”がそれを可能にしています。

自分の体験をもとにした会社づくりを

タケシマ技研の創業は、平成2年。現会長であるお父様が旧石部町(現湖南市)で始められました。学校を卒業後、平成10年にお父様に声をかけられるまでは、別の会社に就職していたという竹嶋社長。家業の経営に関わるようになって、最初に割り当てられたのは、今まで経験したことのない経理の仕事。自分が出来るようになることで、会計士さんに支払う費用を削減できると、簿記を猛勉強しました。

男の子ふたりのお父さんで、自他ともに認める“イクメン”。保育園でも役員を務めるなど、育児にも奮闘中
男の子ふたりのお父さんで、自他ともに認める“イクメン”。保育園でも役員を務めるなど、育児にも奮闘中

こうして、経営に積極的に関わる中で、ある一つの目標が生まれます。それは、従業員が本当に働きやすい職場づくりを目指していくことでした。

「倉庫の作業は、夏暑く、冬寒く、本当に体力的にも厳しいです。改善できる所は改善して、みんながもっと働きやすい環境にするにはどうしたらよいかと、石部に会社がある頃からずっと思ってきました」

また、子育て中のスタッフが多いこともあり、そうした人たちが、気分よく働ける環境を整えることも重要でした。そう強く思うのは、竹嶋社長ご自身の経験が元になっています。フルタイムで働く奥様とともに、子育てを積極的にしている身から、「子育て中に働くことの大変さ、そして子育て中のお母さんの気持ちや状況がわかっている」と言われます。

特に、2014年に社長に就任してからは、その試みに積極的に取り組むようになり、個人に合わせたフレックス制を導入してみたり、身体への負担を軽減するように職場環境の改善を進めておられます。

経験から学んだ経営哲学

そんな努力もあってなのか、スタッフさんたちの表情は和やか。しかし、作業をする手先はきびきびと動きます。

「お客様からも、タケシマさんは他社と比べてミスが少なく、意識高くやってもらえるのでまかせて安心、と言っていただいています。ヒューマンエラーがないとは言えませんが、もしそうなった場合、最善の対処をします。常にお客さんのことを考えながら作業を行っています」

手先の細かい仕事なので、非常に神経のいるお仕事と想像しますが、良い職場環境あってこその、“品質”なのかもしれません。

カートリッジの組み立て作業。その手際よいリズムに思わず見入ってしまう。
カートリッジの組み立て作業。その手際よいリズムに思わず見入ってしまう。

このように、順調に見える経営ですが、リーマンショックの時には25名いたスタッフが、5名になってしまったそうです。その経験から、「小さくても強い会社になろう」と決意を新たにされます。

「うちは、自社製品を作って売っているわけではありません。品質や信頼を築き上げていくことで、もし今後、リーマンショックのようなことが起こり注文が減っても、選んでもらえる会社になっていきたいと思います」

質の良い仕事を提供されていることに加え、最近の製造業の国内回帰の影響もあって、受注は安定しています。スタッフ数も、現在は10名にまで戻り、今後増員の計画もあるとのことです。

家庭あってこその働き方を選択

タケシマ技研の評判を支えるのがスタッフのみなさん。ほとんどの方が草津・栗東の周辺地域から通われています。子育て中の人も多く、また、親子二代で働くスタッフさんもおられます。

お話しを聞いてみたいなと思っていたところ、ご厚意でスタッフの飯田さんと池田さんに少しお時間を割いていただくことができました。

元々はお子さんの保育園が同じで、その時からの知り合いだったという竹嶋社長と池田さん。

当時は、別の会社でフルタイム勤務をしていた池田さんですが、仕事と家庭の両立に悩んでおられました。そんな時、声をかけたのが当時一緒に保育園の役員をしていた竹嶋社長です。

働いてみた感想はいかがでしょうか?

左から飯田さんと池田さん。お二人とも現在、子育て真っ最中のお母さん。
左から飯田さんと池田さん。お二人とも現在、子育て真っ最中のお母さん。

「スタッフみんなが子育ての経験者なので、家庭の状況を理解してもらえることが嬉しいです。もっと働きたい気もしますが、今の段階では“家庭第一”なので、出来る範囲でやりたいと思っています」と池田さん。

それに続き、飯田さんも「急に家の用事が入ったときはみんなでサポートしあえる協力体制があり、助かっています」

丁寧に仕事も教えてもらえるし、作業を行う中で、こうしたらいいなと思うことに耳を傾けてもらえる。”意見を言いやすい環境”とお二人は言います。

他に子育てしながら働いくことで難しさを感じることはありますか?

「子供が病気になった時、病児保育を利用しようと思っても、申込すること自体が大変です。なので、何かしらの方法で利用しやすくなればとは思います」と飯田さん。

それを聞いて、竹嶋さんは答えます。

「将来は、託児施設などを設けたりできればと思います。スタッフ以外の人も利用できるような…大きな夢ですが」

「変化」に対応できる会社を目指して

スタッフそれぞれの状況を理解し、それを考慮した職場作りを目指すタケシマ技研。そうまでしなければいけない理由を竹嶋社長はこう言います。

「働きたくても働けない人材が埋もれていることがもったいないと思っています」

“埋もれた人材”という意味では、地域の障がい者の方々も同様。タケシマ技研では、2年ほど前から福祉施設の作業場と連携をしており、自社の手が足りないときには、作業をお願いされています。施設にも喜んでいただいているといい、将来はタケシマ技研内に作業所を設け、通ってもらえるような形にしていきたいとのこと。

作業中は静か。でも、ふとした会話に笑顔があふれる和やかな職場
作業中は静か。でも、ふとした会話に笑顔があふれる和やかな職場

そういった人材にたくさん活躍してもらうためにも、会社に柔軟性を持たせたいと言う竹嶋社長。

「子供が大きくなったり、国の方針で扶養控除がなくなるようなことがあれば、働き方も当然変わってきます。そうなった時、柔軟に対応して、変わらずスタッフに活躍していただける会社にしたい。“三方よし”でなく、四方、いや、五方と、関わる人にメリットが生まれるような存在になっていきたいと思います」

そう答える竹嶋社長の表情には、“経営者”としての決意とビジョン、そして“お父さん”としての包容力が同居しているように見えました。

取材後記

今回、お話しを伺った、竹嶋社長、そしてスタッフの飯田さんと池田さん。子供さんの保育園が一緒ということで、既に顔なじみだった皆さん。終始和やかな笑い声に満ちたインタビューとなりました。私自身も、初めてお会いしたのに非常に親近感を感じたのは、同時期に子育てをしている者同士の連帯感でしょうか。一筋縄ではいかない子育て。仕事との両立。それを分かち合える存在は非常に貴重です。短い時間でしたが、楽しい時間をありがとうございました。