絆ワークスタイル Vol.5
明るく輝くみんなの「太陽」 ~ 子育てが楽しくなるまちづくり

長浜市黒壁の一角に、今年5月新しいコミュニティカフェがオープンしました。未就学児とそのママ達が気軽に集い、くつろげる場所として、地元を中心にたくさんの利用者を集めています。短期間でなぜ、 ここまで注目されることになったのか ― その理由を探るため、絆ワークスタイルの第五回はその 「子育て応援カフェ LOCO」を取材しました。

「地元のママたちが気軽に集える場所」に。

連日の猛暑日が嘘のように冷たい小雨が降り、夏の終わりを感じさせる 8月末日。平日ということもあり黒壁の観光客の姿もまばらで、なんとなく寂しく感じる通りの先に、「子育て応援カフェ LOCO」がありました。玄関を開けると、外の陰鬱さとは対照的な“明るい空気”が一気に流れ出てきました。こどもとママ達の嬉しい声、楽しい声、そして何かを訴える声が、明るいエネルギーを発散しています。

LOCO の玄関先。何やら楽しい雰囲気が外へも伝わってくる。場所は、改修されたばかりの長浜曳山祭り「山組」の集会所兼練習場を利用。
LOCO の玄関先。何やら楽しい雰囲気が外へも伝わってくる。場所は、改修されたばかりの長浜曳山祭り「山組」の集会所兼練習場を利用。

LOCOは、未就学児とそのママ達を中心に誰でもがくつろげるコミュニティ型カフェ。訪れた時はちょうどセミナーが進行中でしたが、代表の宮本さんに少しお話しをお伺いすることができました。まず、サービスの概要からお聞きします。

「0歳から未就学児とそのママを対象としたカフェ運営やセミナーの開催をしながら、ママの社会復帰を様々なかたちで応援しています」

「ママのあったらいいな」をかたちに。

街の集会所を間借りする形で、この5月にオープンしたばかりのLOCO。現在、宮本さんと副代表を務める桐畑さん以外に、パートさん2名、ボランティア1名の合計5名でお店を運営されています。ここに至るまでお二人は、お住まいである余呉地区で活動している子育てサークルの代表を務められたことがあり、そこでの趣向を凝らしたイベントや活動はたくさんの人に喜ばれていたと言います。特に、結婚を機に岐阜県から引っ越してきた宮本さんには、活動を通じたくさんの友人ができたことは大きな収穫だったとのこと。

この日はベイビースキンケアの講座があったため、たくさんのママと子供たちが勢ぞろい。大人気の企画で既に次回も予約で一杯とのこと。
この日はベイビースキンケアの講座があったため、たくさんのママと子供たちが勢ぞろい。大人気の企画で既に次回も予約で一杯とのこと。

しかし、このような形態の活動では、食事の提供はできないし、活動時間も限られているなど制限も多いため、「もっと気軽に利用できて親子のための設備の整ったコミュニティカフェを始めたい」、と思うようになったと言います。

宮本さん自身も、桐畑さんと同様に、幼い2 人のお子さんを育てるお母さん。
宮本さん自身も、桐畑さんと同様に、幼い2 人のお子さんを育てるお母さん。

その思いを胸に、まずしたこと。それは、地域の子育てママ100名に、どんなサービスのカフェがあったらいいか、アンケートを取ることでした。「私たちの考えが、ずれていないか確認したかったので、出来るだけたくさんの人の声を集めようと思いました」返ってきた回答には、宮本さんたちが想像していたことに加え、ママたちの様々な要望がありました。

たくさんの人からの支援を受けて開業。

その結果に確信を得たお二人。ちょうどその頃、市内で起業塾が開催されるのを知り、受講することになりました。参加をきっかけに、行政や市内の支援機関との結びつきが生まれました。昨今、普及しつつあるクラウドファンディング*で開店資金の一部調達を勧められたのも、そういった支援を受ける過程においてでした。
*クラウドファンディング:様々な取り組みやビジネスプランに賛同した不特定多数の人が、インターネット経由で財源の提供や協力などを行う 出資形態のことを指す。群衆(crowd)と資金調達(funding)を組み合わせた造語。

市長はじめたくさんの関係者が参加したオープニングセレモニー。当日の模様はメディアでも紹介された。
市長はじめたくさんの関係者が参加したオープニングセレモニー。当日の模様はメディアでも紹介された。

目標金額は30万円。何かとお金のかかる備品購入にあてることにしました。2か月の期間を経て、目標額の111%を達成することができました。

事業立ち上げの時期と重なったこともあり、事務処理等、色々と準備するのは思ったより大変だったとのこと。 しかし、「クラウドファンディングをきっかけに、たくさんの人に活動を知ってもらうことができたので良かったと思います」と宮本さんは言います。

特に地元の反響は大きく、開店資金も地域の人を中心に集まりました。それ以外でも、市内企業や友人を含めた “応援ママメンバー”から、家具や備品の提供を受けたりと、オープンにあたり色んな人からの支援を受けることができました。

「ママであることの幸せ」を感じる場を提供したい。

可愛い親子ゾウさんのロゴ。LOCO では親子一緒の時間を 大切にしている。また、LOCO とはハワイ語で「地元」という意味で「地元のママ達が気軽に集える場所」になることを願って命名された。
可愛い親子ゾウさんのロゴ。LOCO では親子一緒の時間を 大切にしている。また、LOCO とはハワイ語で「地元」という意味で「地元のママ達が気軽に集える場所」になることを願って命名された。

「子育てに追われているとそれだけで1日が終わってしまう。少しの時間だけでも、“ママでいれて幸せ”と思える時間を提供したい」これが、宮本さんたちが目指すサービスの原点です。

オープンから3か月。今では、市内だけでなく、彦根、米原、多賀などからもお客さんが訪れるようになりました。この短時間で、ここまでの反響があった理由は何だったのでしょうか。

「ママの“あったらいいな”の声をかたちに出来たのだと思います。また、同時に多くのママが気兼ねなく過ごせる場所を求めていたんだなと改めて実感しています」

食べる、学ぶ、挑戦する、をテーマにしたサービス。

「LOCO は代表としての“卒業”がありませんし、事業としてもしっかり継続させる仕組みづくりが必要だと思います」と語る宮本さん。 その思いをもとに現在、3つのサービスを提供されています。

一つ目は「安全な空間と優しい食事」を届けるコミュニティカフェ。ランチは価格別に 3種類を提供。余呉の美味しいお米や、旧湖北町の中力粉など、食材も出来るだけ地元のものが使われています。今後は更に地域の食材を取り入れる予定だということです。

一から手作りにこだわったお子様ランチメニューの一例。
一から手作りにこだわったお子様ランチメニューの一例。

またカフェには、授乳室、オムツ替えスペースはもちろん、子供用の食事用品、おもちゃなど、食事以外でもママならではのきめ細やかな配慮がされています。外食したくても子連れだと気を使って疲れてしまう、といった声が多く聞かれたとことを受けて、このように親子が一緒に食事を楽しめる工夫がされました。「ここでは、ぐずりだすのも、遊びだすのも、みんな一緒。ママたちも周りに気兼ねなく過ごしてもらえます」

月齢にあった玩具や絵本が準備されているので、退屈しても大丈夫。
月齢にあった玩具や絵本が準備されているので、退屈しても大丈夫。

二つ目は、セミナーの開催。赤ちゃんのお世話に関することから、ママ自身の心や身体をケアするもの、また知育教室や音楽、英語レッスンなど親子で楽しめるものなど、内容もバラエティに富んでいます。それに加え、専門職に相談したいけどなかなか機会がないという声を受け、保健師、助産師、臨床心理士、理学療法士などとマ マを繋ぐ相談会も設けられています。

登録講師は現在15名。LOCO のオープン日である月、火、水殆ど毎日、何かしらの講座が開催されている。
登録講師は現在15名。LOCO のオープン日である月、火、水殆ど毎日、何かしらの講座が開催されている。

そして、三つ目はハンドメイドのアクセサリーや小物を展示販売するスペースの貸出です。「クオリティの高い作品を作っているママ作家さんたちが、作品を世に出す第一歩になれば」との思いでこのサービスを始めるようになったとのこと。

30センチ角のスペースに、それぞれの個性が光るよう展示されたハンドメイド作品。現在12名が利用 。
30センチ角のスペースに、それぞれの個性が光るよう展示されたハンドメイド作品。現在12名が利用 。

人との繋がり、それが新しい出会いを生む。

ママやその子供たちに安心してくつろげる場を提供することの他に、LOCO にはもう一つの役目があります。それは、ここに来ることで地域の中で新たな繋がりを得てもらうことです。子育てが中心となり社会との接点が希薄になりがちなママ達。同じ境遇にいるママの情報交換の場、また行政とも連携し必要な情報を届ける場を設けています。

また、世代間交流を目指し、おばあちゃん世代の方によるセミナーも開催。子供の見守りの場を提供しています。それに加え、キッチンのボランティアスタッフとして活躍されている方もおられ、それらに参加するおばあちゃん達からも、「やりがいがあって嬉しい。生き生きとしてきた」という声をもらうと言います。

そして、ママたちの「次の展開」につながるようにサポートしていく事もLOCOの目標。「社会復帰の第一歩をここから歩み始めてほしい」という思いから、LOCOでのパート雇用をはじめ、前述の小物販売の棚貸しや、セミナー講師としてのデビューの場が設けられています。

今後の展開、そしてその先に描く未来像。

LOCOの取組みは、地域を巻き込み、出会いが出会いを呼び、3 か月あまりで更なる展開を迎えています。

自分たちの地域に近いところでやってほしい、というようなサテライト的な展開への要望や、子供服やおもちゃのリサイクル販売のニーズなどもあり、「今後の展開をしっかり考えていきたい」と宮本さんは語ります。

今後は行政や地域とも更に連携を深め、“赤ちゃん駅”としても設備を整えたいとのこと。“赤ちゃん駅”は、外出中に誰でも無料で授乳やオムツ替えが出来る施設やスペースの愛称。全国に設置が広がっている。
今後は行政や地域とも更に連携を深め、“赤ちゃん駅”としても設備を整えたいとのこと。“赤ちゃん駅”は、外出中に誰でも無料で授乳やオムツ替えが出来る施設やスペースの愛称。全国に設置が広がっている。

ランチの時間も近くなり、次々とオーダーの入る声がキッチンに響いてきました。最後、宮本さんに今後の目標をお聞きしました。

「事業を安定させていくのはもちろんですが、私たちの活動をもっと知ってもらえれば」その理由をこう言います。

「まずは知ってもらって、そして利用してもらうことで、育児で不安を抱えるママの鬱や引きこもり、また、それが引き金となって起こる虐待を防ぎたいと思っています。そして、妊娠中、出産後の外出したい、誰かに相談したい、社会と繋がりたいという思いをサポートし、ここ長浜市を全国でも有数の子育てしやすい街にしていきたいです」

子供たちと、彼らを育むお母さんたち、そしてそれを見守る地域の人々。LOCO を中心に、未来を照らす太陽のような明るいエネルギーがどんどんと広がり波及していくようです。なんだか、こちらまで心がポカポカと温ま る思いで、インタビューを終えました。

取材後記

今出来ること、を大切に。

私自身も子育て真っ最中であるがゆえ、育児と仕事のバランスについては、非常に興味のある話題。「家族や周りの方の協力があり、とてもありがたく感謝しています。ですがまだまだ子どもたちのそばに居てあげたい」と語る宮本さん。「今、出来る、無理のない範囲」を考慮して、現在の LOCO になったと仰います。

現代は、家族の形態が多様化したことで、働き方自体も多様化しています。働く理由もそれぞれ。しかし、宮本さんがふと仰った、「せっかくママで居られる時間を与えてもらったのだから」という言葉。子供はいつか巣立っていく。もちろん、私にも働く理由はありますが、出来る限り子供が育つその一瞬一瞬をこの目で見て大切にしていきたい、と新たに誓った日でした。